彼との夏
観月'S SweetHeart: さん 実家ってなんて安心できる場所なのだろう。 それはモチロン私を守ってくれる両親がいて、なにより、 彼がいないっ♪こんな夢のような場所があるというのは、 いつもの生活の中では気付かない。だが、実家に帰って くるとつくづく「平和だ」と思うのである。まさに天国。 そう、今まではそう思っていた。 今年は夏休みに入りすぐに帰省した。言うまでもなく彼から 逃れるためである。彼とは違い、私は特に部活に入っている わけでもなく、寮に残る必要も特にない。 そういえば、そんなことを言ったら観月が泣き付いてきたっけ。 実家に帰ってきて地元の友達と連絡を取り 遊び歩いていると、いつのまにか夏休みは半分を過ぎていた。 「もぉ10日過ぎてんだぁ。。。」 カレンダーを見ながら、書いていた暑中見舞いが届く日を 確かめてみると、お盆かお盆が終わったころである。 「残暑見舞いにするか・・・」 宛名のみ書かれた葉書を裏返し、高校での友達に残暑見舞いを 書き始めた。貰った暑中見舞いを読んでは、返事を書くように 葉書に文面を連ねる。最近は携帯でmailが送れてしまう世の中。 久しぶりに書き始めた手書きの手紙に文面は長くなるばかり。 楽しくなって、びっちり書き上げると何故だか達成感。 そんな私のところに母が今届いた分の葉書と手紙を持って部屋に やってきた。 「、今手紙と一緒に速達で小包も届いてたわよ?」 「小包?誰から?」 手紙を手渡す母に、とりあえず聞いてみるが少しだけ 心当たりはあったりする。 「観月くんからよ。リビングにおいておいたわ。 ねぇ、一緒に見ていいかしら?」 「・・・ありがと。ゼヒ・・・」 一緒に見てくれるんだ・・・ 少しだけ救われた気分。だってひとりで開けるの怖いんだモノ。 私はイスから立ち上がると勉強机を離れ、部屋の電気を消し エアコンはそのままでリビングへと向かった。 リビングに置かれた小包には「割れ物注意」と書かれた シールが貼り付けられていた。 割れ物? 不思議に思いながら包みを開けると中からでてきたのは 金魚鉢だった。 「何故・・・?」 私の発した呟きに母が笑いを漏らす。母も同じ意見らしい。 というか、誰が見ても「?」がでてくると思う・・・。 いきなり、こんなモノを送りつけてきて何を考えているのだろう。 二言三言、母と話すと鉢を持って部屋に戻った。 とりあえず、机の上に鉢を置いて、私はため息を漏らした。 色々考えてみるものの、誕生日でもないし、というか 誕生日に金魚鉢貰ってもどう反応していいのか困るけど。。。 書きかけの葉書で鉢をコツコツとノックして鉢の上に葉書を置くと、 今日きたという手紙にペーパーナイフを当てた。 手紙を送ってくれるような友達には寮のほうの住所を伝えてあるため 実家に届くものは限られてくる。ただ、夏休みで帰省していることで、 高校の友達から「電波入らないよ〜」などと手紙が届いているのだ。 そして今日も3通の手紙が届いていた。2通は予備校の案内。 そういえば、高校3年生って受験生だ・・・った。 遊びすぎた夏休み前半を思い出し少し反省し、残りの1通を手に取った。 「定形外?なんか、コトコト言うんだけど・・・?」 大きな封筒を揺らして、そう一人で呟くと差出人を確認する為に 封筒をひっくり返した。そこのはデカデカと・・・ 「貴女のはじめよりv」と書かれていた。 ・・・な、名前書け、名前をっ!! 「で、その私のはじめちゃんがなんだって?」 開封するとビデオとノートが一冊、MDが1つ同封されていた。 ビデオは・・・ビデオレターだろう・・・(涙) MDは想像したくないけど、アホな事ほざいてるんだと思う。 そして、ノートも開けなくても分かる、なんかきっとやっぱり アホなことが書き綴られてあるんだろう。 私はまずMDから挑むことにした。聴くではなく、聞く。 いや、これは聞きたくないからこそ挑むのだ。 お気に入りの曲を奏でるMDを止めると観月から送られてきたMDを 再生してみた。 『あー、おはようございます。もしかして、こんにちはの時間ですか?』 コンポから流れてきた声に、思わずリモコンの「停止」ボタンを押してしまった。 しかし、こちらに帰ってきてから携帯の電源をOFFにしている私としては 少しだけこの行為が心苦しく、再度再生ボタンを押した。 『あっ、こんばんわかもしれませんね。困りました。こう離れていると 何から話したらいいのか・・・そういえば、の実家は電波の入りが 悪いみたいですね。ここのところ、電話もmailも入らないみたいなんです。』 それは私が電源切ってるからです。 携帯をOFFにしている理由、それは言わなくても分かると思う。 こっちに帰ってきた日は一日中携帯がmailと電話の着信を知らせていて 大変だったのだ。そんな日が一ヶ月以上続くなど想像したくない。 私はmailのレスもほどほどに、携帯の電源を切ったのだ。 『一日一回はの声を聞かないと生きていけない僕にとっては 地獄のような夏休みです。きっと、も同じ思いなのでしょう。』 いえ、遊び歩いてました。 すごく幸せな夏休みです。コレが届くまでは。 『それでですね、きっと夜も眠れないだろうと思いまして、 ひつじを僕が数えてさしあげようと思い立ったわけです。』 はっ?! 『それでは行きますよ、ひつじ100まで。ひつじが一匹、ひつじが2匹 ひつじが3匹、ひつじが4匹、ひつじが・・・・』 それは永遠と100まで続けられた。途中「んふっ」とか「愛してます」など アホな囁きもところどころに入っていて、快眠どころか夢見が悪くなりそう だと心底思った。そして100匹目を告げたMDは止まったのである。 MD恐るべし・・・。 次、何が来ても怖くないような気がしたが、VTRはそれほど 恐ろしいもではなかった。はっきり言うと面白くなかった。内容は 観月の部活風景の映像だった。撮影:赤澤といったところだろう。 あまり上手く取れていないのが救いであった(笑)。 そしてノートには1日10ページほどの私宛の手紙のような日記が 綴られていた。読むのに時間がかかりそうな代物で、見ていただけで 手が震えた。 ラヴレターを何通も貰ったことがあるヤツはいても、こんなもの貰った ことがあるヤツは滅多に、いやきっと私が初めてだろう。 そんなこんなで、すっかり顔色の悪くなった私のもとに、再度母がやってきた。 「?今夜の夏祭りの浴衣なんだけどナデシコでいいかしら・・・? あら、どうしたの?行けそうにない?」 「い、行くって!!まーちゃんたちと約束したもん!!」 「そう?じゃ、浴衣は去年作ったのでいいかしら?」 「もちろんvvナデシコすっごく気に入ってるの♪」 「じゃあ、出しておくから自分で着るのよ。」 「はーいvv」 お調子者というわけではないが、お祭りが好きな私はすぐに MDたちの内容を忘れ、浴衣に着替えるためにシャワーを 浴びにお風呂に向かった。それは、もう鼻歌交じりに。 浴衣を着て、帯で蝶を作る。形を整え、できあがった蝶を背中に回して、 母に最後だけ直してもらうと浴衣姿の両親と共に家をでた。 夏祭りに行く前に、お墓参りに行くのが我が家の毎年のこと。 お盆なのだから、お墓参りは外せない。 墓地に向かうと、お墓には提灯がいくつも灯されていた。 夜だというのに明るい墓地には、近所の人々がお墓参りに来ている。 その中に、友達の姿を見つけ駆け出そうとしたときだった。 1台のBMが私たち家族の前で停まった。 「間に合ったみたいでよかったです。」 そう言って、車から降りてきたのは言うまでもなく【観月はじめ】。 急に停まった車と彼の姿に私は目を見開いて驚いた。 近所の人たちも停まった高級車に「なんだ?」「なんだ?」と 車の周りに集まりだした。 「お父様、お母様、ご無沙汰しております。そしても、お久しぶりですね。」 にっこりと笑みを浮かべながら彼は回りに聞こえるように述べた。 対照的に私は動揺しまくっていた。 「あ・・・・・な、なんで観月ちゃんがココに?」 「今日、夏祭りだって裕太くんから聞きましてね。」 ゆ、裕太ぁ!?←密かに連絡取っていた。 「祭りに行く前にお墓参りにいくとも言ってたので、のご先祖さまに 婚約の報告に僕も行かなければと思いましてvv」 にこやかに彼は続けていた。それはもう、私の顔色を悪くするほど。 そして、騒ぎを聞いていた私の友人たちの言葉が私を奈落の底に 引き落とす。 「?!何、婚約したの?!」 「マジ?もぅ結婚かよ!」 「できちゃった婚とか、ないよね?」 「おめでとー!!お幸せにねvv」 「はい、皆さん、ありがとうございます。幸せになります。」 「観月ちゃん?!み、みんなも!ちょっと待ってよ!!なんで・・・ なんで、そんなことになってるのよぉー!!」 私の叫びはむなしく、周りの祝福の言葉に消されていく。 その後、近所のみんなに「おめでとう」を言ってもらい、 祭りに一緒に行くはずだった友人は観月と私に余計な気を使ってくれ、 観月ちゃんと一緒に夏祭りに行くことになった。 「今日のはヒラヒラしててまた可愛いですねvv」 「ありがと。この浴衣気に入ってるの。」 「そうですね、これで赤でしたら金魚のようです。」 浴衣姿の私に観月はご満悦の様子だ。婚約の報告もできたようだし。 てか、なんでそう話をややこしくしにくるのかしら・・・ ぼーっとそんなことを考えていると観月が繋いでいた手を きゅっと引っ張った。 「、金魚すくいやりましょうvv」 「金魚すくい?でも、うち水槽ないよ?」 「? 金魚鉢とどきませんでした?」 「あっ・・・届いてる。って、始めからやる気だったんでしょ? 観月ちゃん上手そうだもんね。いっぱい取るんでしょ?」 「いえ、今日は1匹しかとるつもりはありませんからvv あっ、も1匹すくってくださいね。」 「ふたりで2匹?そりゃ一匹じゃ可哀想だけど。」 「今日の記念です。彼らも僕たちのように一生寄り添って 生きていくことでしょうvvそしてきっと、繁殖も素晴らしい 「い、いわんでいー!!」 こうして、幸せだった実家での生活も幕を閉じたのである。 いつもお世話になっている皆様。残暑見舞い申し上げます。毎日暑いですが いかがお過ごしですか?藤岳は、もうすぐ集中講義(授業)が始まるので、 それまで遊ぶぞ!!とはりきって遊び歩いてます。その為、最近NETにも 顔を出さない始末。。。HP方の放置しててごめんなさい。mailもレス遅くて ごめんなさい。でも、短い夏休み楽しめました。まだまだTDRとかいく予定で すが、(とかって・・・笑)授業始まればちゃんと更新するかな?アハハ! 今回、なんかイベントドリの恒例になっている観月ちゃんシリーズでしたが これ藤岳の一番好きなシリーズなのに人気ないっすよね〜。人気投票見てて スゲー笑えます。お馬鹿すぎて、愛が伝わらないのかしら?! 何はともあれ、夏はこれから。暑い日は続きますが無事夏を乗り越えましょう! DLは皆様ご自由にどーぞ。掲載は相互サイトさまのみご自由にどうぞ。 それ以外のサイト様はお手数ですがご一報ください。 03,08,20 Makoto Fujitake
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