BIRTHDAY PRESENTS DREAM TO 薬袋しづきさまに捧げます。
昼の時間


手塚's Young sister:手塚 さん



『兄は部活を引退して、休日も家にいる事が多くなった。』
と、云うのが普通だと思うのだが、朝一緒に登校する以外、
国光はと一緒にいようとする事はなかった。
部活の替わりに増えたのが大学受験のための勉強に図書館に
通ったり、部活仲間と勉強の息抜きにテニスをしたりと・・・
引退前とかわらず国光は家を空けることがしょっちゅうだった。


「お兄ちゃん、最近アタシのこと避けてない?」
「避けてるなら毎朝一緒に行かないだろ。」
「そ、そうだよね。変なこと言ってゴメン。」
は思い切ってって気になっていた事を国光に問い掛けた。
しかし特に変わった様子も見せず、淡々と『NO』と答えられたのだった。

国光がを避けていたのは事実。朝一緒に登校しているのも
事実であった。彼が部活を引退し、10日ほど経った朝、偶然同じ
バスに居合わせたのクラスメイトが声を掛けてきた
その日から国光の態度が変わったのだった。

「あっそうそう!お兄ちゃん、今週末は空いてる?」
「今週末?」
「うん、今週の土曜日。演劇見に行かない?チケット貰ったんだ。」
「・・・悪い。週末は大石と出掛ける事になっているんだ。」
「そっかぁ。残念。」
「友達と行って来るといい。」
「うん、じゃ、また他、当たってみるよ。」
そういうとは国光に手を振って自室に戻っていった。
階段を駆け上がっていくの後姿を見送りながら国光は溜息をつく。

「また大石に頼むか・・・。」


、おはよ☆」
「あっ、ヒカリ、おはよ。」
に声を掛けてきた少女をはクラスメイトと俺に紹介した。
「・・・てっ手塚さん?!ま、まさかの彼氏っ?!」
「えっ?!ちっ、違うよ!!お兄ちゃん!手塚の兄、手塚国光。」
がそういうと少女はの手を掴んで熱弁に語りだした。
「羨ましいっ!!なんかもぉがモテル理由に項目が追加されたって感じ。」
「(追加って…)モテてないでしょ。」
「何言ってんの!!手塚さん、昨日も声掛けられていたんですよ!」
「あれはただのナンパだし。誰でもいいんだよ。」
「違うって!!あーでもがそういうの相手にしない理由が分かった。」
「? 何よ?」
「手塚さんがお兄さんならね…理想も高くなるって訳だ。」
納得した様な表情で語る少女には俺の表情を窺ってきた。
「お兄ちゃん、呆れてるでしょ。」

あの日のの言葉が頭の中でリフレインする。
あの時はたちの会話に呆れていたわけでなく、二人の会話内容に
自惚れと嫉妬を感じる自分がいた事に呆れていたのだった。
「兄妹なのに・・・な・・・。」
そう呟くと国光は携帯を取り出し大石のアドレスを呼び出した。


週末・・・結局みんな忙しくて、は一人で出掛ける事にした。
折角貰ったチケットを無駄にするのは悪い気がして持っていく事にした。
残ってしまった1枚は会場近くで観客っぽい人にあげればいいと思い
2枚持って昼少し前に家を出た。国光は既に朝から出かけていて今朝は
顔も会わせていない。
「確かに起きたのは10時過ぎてたけど起こしてってくれればいいのに。」
ブツブツ文句をイイながら会場近くのショッピングモールでウィンド
ウショッピングをして、は開場までの時間を潰していた。

「ねぇ彼女、ひとり?」
トンと肩を叩かれ振り返るといかにも”遊んでます”と云う男の姿。
『こう云うのは相手にしないでおこう』
は無視することにして再度手に取って見ていた服に視線を戻した。
「アレ〜?もしかしてムシ?」
そういうとナンパ男はの隣に並んで言葉を続けた。
「何ムスっとしんの?彼氏にデートすっぽかされたとか♪」
「そんな奴忘れて俺とどっか行かない?」
勝手な事ばかり言う男に『無視すればどうにか…』と思っていた
段々その男が邪魔に思えてきた。は男から離れるように
店を出て一人で歩き出した。


「なぁ手塚、あれちゃんじゃないか?」
大石の言葉に国光は手元の本から視線をオープンテラスの先へと移した。
国光たちがいたのはショッピングモール内にある最近流行のカフェテラス。
そこからはモール内を行き交う人々の姿がよく見渡せた。
国光はその大勢が行き交う中、の姿を探した。
「ホントだ、じゃないか・・・。」
国光の目に入ってきたのは困った表情のの横にいる多分
いや間違いなくナンパ目的の男。国光の脳裏に先日の
クラスメイトの言葉がよぎる。

『何言ってんの!!手塚さん、昨日も声掛けられていたんですよ!』

昨日も・・・か・・・。
そう思うとがナンパ慣れしている気がして一人で
振り切れるようにも思えた。しかしの困った表情が脳裏によぎり
国光は大石にスマナイというと席を立ち、の後を追った。


「はぁ〜、もぉいい加減にしてください。」
あまりにもシツコイ男についには痺れを切らした。
「私、この後、約束があるんです。付いて来ないで下さい。」
「そんなのすっぽかしちゃって俺と遊ぼうって。」
の反論も虚しく、男はヘラヘラと笑った。

「そんなのとは俺のことか。」

国光はゆっくりとたちの元へ歩み寄った。
急に声のかかった事にも驚いたが、声を掛けてきた人物に二人は固まった。
この場にいるはずのない兄の姿と、自分自身と比べるだけ無駄な美少年の姿に。
、行こう。」
国光がの肩を抱き寄せるとナンパ男は成す術もなく
から離れていった。


、大丈夫か?」
「うん、ありがと・・・ってなんでお兄ちゃんがココにいるの!」
驚いた声質で、しかし嬉しそうにはそう言った。
「大石とテラスでお前を見つけてな。それで・・・」
「大石さんは?」
「悪いって言って出てきたから、戻らないと思って帰ってるだろうな。」
「じゃあ、一緒に劇見にイコ!!」
「あぁ。」
目を輝かせるに国光は微笑んだ。

の困った表情に居ても立ってもいられなくなった自分。
嬉しそうに笑うを見て笑みがこぼれる自分。
そんな自身の姿と今までを避けていた自身を比べ
国光は苦笑した。
避けてるつもりでも、気がつけばを追いかけてるような気がした。

「・・・無駄な足掻きか・・・」
「ん?なんか言った?」
国光の独り言には首をかしげながら尋ねた。
「そうだな、には適わないってな。」
「??どういう意味?」
「さぁな。」
国光の言葉に不思議そうな表情を見せた
「今日はお兄ちゃんとデートだvv」
そういって国光の腕に自身の腕を絡ませた。




END



薬袋しづきさまお誕生日おめでとうございます。藤岳も誕生日祝いでイラを
頂いたのでお返しに何か送りますと言いましたら朝の時間の続編をリクして
いただいたので昼の時間です。そして次は夜?どうしようか。続くようなら
また続編「夜の時間」をいつか書きましょうvv(笑)

ここまで、お付き合いしてくださった様本当にありがとうございました。
感想など頂けましたら喜びますのでBBSへカキコをヨロシコです。
2002.11.21 makoto fujitake